はじめに・・・

母と一緒に作品を発表し始めてから25年の月日が流れました。

その短くはない歳月を思い返し、何より有難く思うのは、母も私も「作る」ということに対する意欲が途切れることが無かったことです。

華やかな展覧会とは逆に、それ以外の日々は地道な作業の連続です。

苦と思わずに続けて来れたのは、一人ではなく二人だったからではないかとこの頃思うようになりました。

初めての展覧会の時、母は今の私と同じ50代でした。そう思うと、随分と遅咲きだったのだと驚きます。

けれども、現在まで倦むことなく制作を続けています。

そんな姿を見ながら、私もそうありたいと今日も人形に向かっています。

2024年3月

矢倉奈津子

(プロフィール)

矢倉奈津子(やぐら・なつこ)

 大阪府出身。ビスクドール作家。

2002 年よりビスクドールの製作を開始。

19 世紀のヨーロッパにおいて、ブルジョア階級の裕福な婦人やその子女の間で流行したアンティークビスクドールを再現したリプロダクションと、オリジナルの人形をともに手掛ける。

製法は、粘土の状態から完成までに、素焼き・本焼き・色付け・顔描きなど約7回の高温窯焼きを要する磁器製法。

人形の衣装は、ヨーロッパのシルク生地やアンティークレースなどの素材にこだわったオリジナルデザイン。

革靴・ウィッグ・靴下まで含めたすべてが、作家自身による手作りである。

近年は、胡粉を用いた古来の桐塑人形の制作にも取り組んでいる。

後藤典子(ごとう・のりこ)

 大阪府出身。刺繍家。

1990 年頃より、額中心の作品を作り始める。従来の刺繍の枠組みにとどまらない、繊細で絵画的な作品を得意とする。

制作にあたっては、布に下地染めをし、6本からなる刺繍糸を1本にばらして使用。

60号から80 号の大きなサイズの作品を中心に、近世ヨーロッパの生活空間をイメージしながら多彩な作品を制作。

そのなかには、日本画や西洋画からインスピレーションを受け、模写するように刺した作品や、独自のデザインのもの、椅子などの小家具に刺繍を施した作品などがある。

アンティークの額縁を使用した作品も数多く、一針一針の手仕事による刺繍と、職人の手で生み出され、長い時を経た額との調和が好評を得る。

また、その他の額については全て、作品に合わせたオーダーメイドにこだわっている。

実子の矢倉奈津子とともに、「刺繍の庭園と人形たち」と題した展覧会を定期的に開催している。

展覧会の記録

開催日会場
1999年 11月大阪・天王寺学館「刺繍の庭園」展
2004年 7月大阪・リーガロイヤルホテルギャラリー「刺繍の庭園 ~人形とともに~」展
2009年 3月大阪・リーガロイヤルホテルギャラリー「刺繍の庭園 ~人形とともに~」展
2010年 9月滋賀県 栗東芸術文化会館 さきら「刺繍の庭園と人形たち」展
2010年 11月京都北山 コスタンテ アンティークス矢倉奈津子「暮らしに息づく人形たち」展
2011年 10月神戸 ギャラリー北野坂「刺繍の庭園と人形たち」展
2013年 3月大阪リーガロイヤルホテルギャラリー「刺繍の庭園と人形たち」展
2016年 3月大阪北浜 伏見ビルサロン「刺繍の庭園と人形たち」展
2017年 10月大阪北浜 伏見ビルサロン「刺繍の庭園と人形たち」展
2019年 3月大阪北浜 伏見ビルサロン「刺繍の庭園と人形たち」展
2020年 12月大阪 LAD'S GALLERY「刺繍の庭園と人形たち」展
2022年 3月大阪 LAD'S GALLERY「刺繍の庭園と人形たち」展
2024年 3月大阪 LAD'S GALLERY「刺繍の庭園と人形たち」展
2025年 9月30日~10月5日(予定)大阪 LADS GALLERY「刺繍の庭園と人形たち」展